あずかった謎:商店街のアーケードの大時計が、毎年、元日だけ止まる。二日には、何ごともなく動いている。修理を呼んだという話は聞かない。「初詣の帰りに見上げるたび、止まっている。うちの子が『時間が死んでる』と言い出して、気味が悪い」と、酒屋のご主人から。
観測:まず、過去の元日の写真を集めました。商店街の初売りのスナップには、たしかに、どの年も同じ時刻で止まった大時計が写っています。針は、いつも十時十分。文字盤がいちばん晴れやかに見える、時計屋が飾りの時計に使う、あの角度です。
大時計の管理を任されているのは、アーケードのはずれの、小さな時計店でした。軋む戸を開けて話を伺うと、ご主人は、悪びれもせずに教えてくれました。
そっと、返す:「正月くらい、街の時間も休ませてやりたいじゃないですか」。大晦日の夜、ご主人は毎年、閉店後にひとりで梯子をかけ、大時計を止めるのだそうです。針は十時十分。いちばん、笑っているように見える角度で。そして二日の朝、初売りの前に、また動かす。先代からの、誰にも頼まれていない仕事だそうです。
酒屋のご主人には、そのまま伝えました。「なんだ」と笑って、それから少しだけ黙って、「来年から、止まった時計に挨拶するわ」と言っていました。お子さんには「時間も元日はお休み」と伝わったそうです。事件では、ありませんでした。いつものことです。