2009.10.02
観測を始めた。誰も見なくなったサイトを巡って、消える前に記録しておこうと思う。それだけのこと。大それた理由は、ない。……ないと、思う。
2010.01.14
「みなと写真館」を記録。トップだけ残って、中身は全部リンク切れ。写真屋のサイトから、写真だけが消えている。空の額縁ばかりの家を歩いているようだった。
2010.06.30
最近気づいた。この観測所の「最終更新」が、いつ見ても今より
三分あとを指している。サーバの時計を疑って、直そうとした。直らなかった。設定はどこも合っている。合っているのに、三分先。
2010.11.21
霧の濃い夜は、観測がはかどる。理由はうまく言えない。濃い霧の晩は、消えたはずのページが、たまに、開くことがある。キャッシュというやつだろう。そういうことに、しておく。
2011.03.09
台帳の観測所が、また一つ止まった。壱、弐、参……気づけば、動いているのはここだけになっていた。
なぜ、ここだけ。
2011.09.17
「ほしぞらプラネタリウム同好会」を収蔵。伝言板に、会員Kさんが毎年書き込みを続けている。誰も返さない伝言板に、律儀に、毎年。ウェブ廃墟には、こういう灯りが残っている。消してはいけない類の灯りだ。
2012.08.15
「夜だけ点く空き家の電灯」の件、解けた。壊れたタイマーではなく、残った習慣。事件じゃなかった。たいてい、そういうものだ。この街の謎は、ほとんどが、誰かの習慣の化石でできている。
2012.12.24
相談簿の記録を読み返す。私は「そっと返す」と書き続けているが、返しきれないものが、少しずつ手元に残る。今夜はそれを、棚卸しした。……増えている。
2013.06.13
過疎の掲示板を記録していたら、「この掲示板が消えたら霧越のネットも終わり」という書き込みがあった。終わらせないために記録しているのか、終わったあとのために記録しているのか、自分でも、たまに分からなくなる。
2013.11.20
更新の間隔が、自分でも空いてきた。それでも、やめられない。灯りを消すと、この街のネットは本当に真っ暗になる気がして。
2014.02.03
昨夜の日誌を読み返して、手が止まった。
覚えのない一行がある。私の文体で、私の書きそうなことが、書いてある。ただ、それを書いた夜の記憶だけが、ない。疲れているのだろう。今夜は早めに閉める。
2014.05.18
過去のあずかりものを四件、公開した。どの相談者の方も、快く許してくださった。「あんなことで悩んでいたのが、いまでは懐かしい」と。謎は、解けてしまえば、思い出になる。ならないものも、あるけれど。
2014.08.03
ほしぞらの伝言板を再訪。会員Kさんの書き込みは、去年の十二月で「最後にします」と結ばれていた。十年、続いた灯りだった。記録は、私が引き継ぐ。すばるの見える季節が、今年も来る。
2014.11.19
青井さんから相談。つばめの柱時計が、水曜だけ三分遅れる、と。……三分。この観測所と、同じ数字だ。
向きは、逆だけれど。