2014年11月19日の夜、お問い合わせのフォームから届いたものです。ご本人の許可を得て、そのまま載せます。(観測者)
はじめまして。青井透といいます。市内の会社に勤めています。
変な相談だと思われたら、すみません。でも、掲示板で観測所のことを知って、ここなら笑わずに聞いてくれる気がして、書いています。
会社帰りに、本町の喫茶「つばめ」に寄るのが習慣です。水曜は仕事が定時で終わるので、毎週水曜の夕方は、必ずあの店にいます。窓際の席で、ブレンドを一杯。それだけなんですが、あの店の静かさに、ずいぶん助けられています。
本題です。あの店の柱時計、毎週水曜だけ、遅れているんです。
気づいたのは先月です。スマホで時間を確かめてから店の時計を見上げたら、三分、遅れていました。古い時計だから、と最初は思いました。でも、次の日の木曜の昼に前を通ったら、直っていたんです。ガラス越しに見ただけですが、あれは合っていました。
それから毎週、癖で確かめてしまいます。水曜の夕方は、三分遅れ。木曜には、直っている。きっちり三分です。二分でも五分でもなく。
誰かが触っているんでしょうか。でも、誰が、なんのために? 泥棒が時計を三分だけ遅らせて、翌朝直しに来るなんて、聞いたことがありません。
マスターに直接きけばいいのかもしれません。でも、なんとなく、きけないんです。あの時計を見上げるときのマスターの顔は、なんというか……覗いてはいけないものを覗くみたいで。常連のくせに、変ですね。
気のせいなら気のせいで、構いません。ただ、なんで三分だけなのか。それが、ずっと頭から離れないんです。
青井 透
観測者:お引き受けします。時計は、狂うものです。けれど「毎週決まった曜日に、決まった分だけ狂って、翌日直る」時計は、狂っているのではありません。それは、誰かが、そうしているのです。――では、店を覗きにいきましょう。