霧越観測所 壱― 書庫(原本のまま保存)―

※本所注記:現存する最古の観測所の記録である。文体から、観測者は本所とは別人と思われる。2005年11月を最後に、途絶。

2001.04.08
観測所を名乗ることにした。名乗ったところで、することは変わらない。霧の出る時刻と、消えてゆくものの記録。
2002.09.30
本町の乾物屋のページが消えた。先週まで、あったのに。消える前の週に、必ず更新が一度だけ増えるのは、なぜだろう。灯が消える前に、一度だけ明るくなる、あれに似ている。
2003.11.08
ほしぞらの会の観望会に混ぜてもらう。会長どのの言うとおり、霧の湧く時刻は、時計より正確だ。われわれの観測とは、つまり、その時刻を測ることなのだが、会長どのには、まだ言っていない。
2004.06.20
「うつしを取る」作業を続ける。うつしを取ったページは、安心して消えてゆくように見える。気のせいであってほしい。
2005.02.11
弐と参に、引き継ぎの目録を渡した。私の観測も、そろそろ、しまい支度である。
2005.11.19
霧、濃し。本日の観測をもって、当所の記録を閉じる。この書きつけを、いつか、誰かが「うつし」に来るのだろう。そのときのために、灯は消さずにおく。

(記録は、ここで終わっている)

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